2024年9月5日
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輸送モードの最適化とは:物流改善に向けて

物流コンサルタント 谷井勇太

輸送モードとは、「貨物を輸送する際の自動車や鉄道、船舶などの輸送手段」を指します。現在、国内のさまざまな業界で最も利用されている輸送モードはトラック輸送です。(出展:経済産業省・国土交通省・農林水産省:我が国の物流を取り巻く現状と取り組み状況

近年、モーダルシフトと呼ばれるトラックから鉄道や船舶へ輸送モードが徐々に変わりつつあります。
トラック輸送に比べてCO₂排出量が少ないことによる環境負荷の低減や、効率的な輸送による物流コストの削減が期待されています。

このような効果があるにもかかわらず、現在でもトラック輸送が主な輸送モードとして選ばれています。

   ・なぜ、トラック輸送が選ばれているのでしょうか?
   ・また、輸送モードはどのように選ばれているのでしょうか?

今回は、トラック輸送が選ばれる理由と、最適な輸送モードを選ぶ方法について解説します。


トラック輸送が選ばれる理由

1. 多様な納品条件への対応力

トラック輸送は、小ロット(1 P/L~トラック1台分の貨物量)かつ時間指定のある納品条件に最適な輸送モードとです。さまざまな納品先において、製造計画や出庫予定に合わせ、必要な量をこまめに補充する運用形態が一般的とされます。その際、トラック輸送の需要は高く、主要な輸送モードとして選ばれています。

鉄道や船舶輸送をみていきましょう。一般的にトラック輸送と比べ、納品までの日数が長くなりますが、一度に大量に貨物を輸送する場合に適しています。また、鉄道や船舶による輸送を行う際には、前もって輸送スケジュールを計画し、輸送会社を手配する必要があります。主に、納品までの日数に余裕があり、破損等のリスクが少ない貨物を輸送する際に選ばれています。

輸送モード日程調整手配の手間着時間指定スコア
トラック14
鉄道・船舶4
◎:5点, 〇:3点, △:2点, ▲:1点とする。

納品先の国内の顧客のニーズに合わせた必要な量をこまめに輸送し、着時間等の納品条件に柔軟な対応が可能なトラック輸送に優位性がある現状といえます。

2. 輸送モードで最も充実した交通インフラ

トラック輸送は、鉄道や船舶輸送と比べて全国に交通インフラが整備されています。また、近年の法改正による労働時間の上限規制を考慮しても、3-400 km程度の距離であれば翌日に納品することが可能です。

一方、鉄道や船舶輸送となると、全国各所にインフラが整備されているわけではありません。鉄道は線路が、船舶は入港可能な港湾インフラが整備されていなければ輸送できません。また、一般的に荷降ろし場所は納品先ではなくストックヤードとなります。このストックヤードから納品先にトラックで輸送する運用となります。このように、一つの貨物を輸送するにあたり、複数の輸送モードを組み合わせることで運用するため、納品までの日数がトラック輸送と比べて長くなることがデメリットとなります。

鉄道や船舶輸送は複数の輸送モードを併用するため、運用・管理の工数が増える!

3. 特殊貨物に特化した車両設備

輸送する貨物は、さまざまな荷姿や輸送条件がありますが、中でも精密機器や高価値商品に関して、輸送車両の特殊設備が必要とされる場合があります。トラックの荷台は、貨物の荷姿や輸送条件に合わせた特殊設備を搭載することが可能です。

これに対し、鉄道輸送では鉄道コンテナと呼ばれる荷台を利用します。鉄道コンテナの種類を見ると冷凍・冷蔵設備を有するものはありますが、振動対策等の特殊設備はありません。
船舶輸送も同様です。一般的には貨物を積み込んだトレーラシャーシを船舶で輸送します。トレーラシャーシの車両設備はドライをはじめとし、冷凍や冷蔵設備以外は少ない現状です。

このような理由から、現在の主たる輸送モードはトラック輸送であることがわかります。

トラック輸送は幅広い貨物への対応力💮!

最適な輸送モードの選び方

1. 輸送頻度・量・距離に応じた最適な輸送モード

これまでの内容を踏まえ、輸送距離が近く輸送頻度が高い場合には、臨機応変に対応が可能なトラック輸送が最も適しています。
運用する中で、物量が多くなる場合が少なからずあるでしょう。その際、輸送会社と事前に予定を共有し、調整することで円滑な運用を実現できるでしょう。

一方、輸送距離が長く一度の輸送量が多い場合を考えてみましょう。
納品までの日数に余裕があり、輸送頻度が少ない場合には、鉄道や船舶輸送の利用は現実的でしょう。
海外から輸入する海上コンテナ貨物が最も近い運用形態として挙げられます。

納品までの日数がタイトかつ輸送頻度が多い場合はどうでしょうか?
ここまでに説明したとおり、納品までの日数や日程等の調整が膨大となり、運用が難しいことが予想されます。

輸送モードの選択肢を広げる方法はないのでしょうか?

2. 保管拠点を活用した最適な輸送モード

ここまでの内容を踏まえ、保管をするという考え方があります。
納品先まで距離の短い場所に、在庫として保管する拠点を設けます。その保管拠点に必要在庫の減少分を定期的に輸送することで、輸送モードの選択肢が広がります。また、物量の大小にかかわらず、納品条件を優先した場合、最も効率的な運用形態といえるでしょう。

しかし、保管する際には注意すべきポイントがあります。

   ・保管費用は適切か

   ・在庫の回転率は考慮しているか

   ・保管拠点における在庫管理は正確にできるか

   ・保管拠点からの輸送効率や積載率は十分か

これらの要件を一つ一つクリアすることで、輸送モードの選択肢を広げることが可能となるでしょう。

3. 輸送条件に合わせた輸送モード

物流業務を円滑に運用するためには、輸送する商品の特性や顧客のニーズに合わせた輸送モードの選択が重要となります。例えば、温度管理を要する貨物や振動対策を要する精密機器などは、トラック輸送の対応力が優れているでしょう。一方、特殊な車両設備や特別な納品条件が必要ない貨物であれば、鉄道や船舶輸送に切り替え、輸送モードを状況に応じて切り分けることが輸送モードの最適化に繋がるでしょう。

まとめ

輸送モードは物流業務を効率的に運用することに加え、物流コストを削減するために、自社に合った適切な輸送モードを選択することが重要となります。また、輸送モードを検討する際には、保管拠点を併用することで、より効率的な運用を実現可能となるでしょう。

一方で、輸送モードごとのメリットとデメリットを正しく理解し、事前に対策を構えておくことが重要です。
まずは自社の輸送モードの現状を棚卸しした上で、物流コストの整合性や実際に活用できるかどうかについて検証することで、最適な輸送モードを選択することができるでしょう。